今回は、3歳の息子がスペインで接種したB型髄膜炎のワクチンの第2回目の接種で、高熱どころか左上半身が動かなくなるという副作用を経験したお話をします。少し長い記事ですが、お付き合いいただければ幸いです(下に続く…)。
B型髄膜炎とは
最初に申しておきますと、今回のテーマであるB型髄膜炎(Meningitis B)のためのワクチンBexsero(もしくはTrumenba)は、まだ新しいワクチンです。日本ではまだ認可されておりません。これは、B型髄膜炎の発生が日本では殆ど見られないことが背景にあると思います。このため、接種する場合は、輸入ワクチンを取り扱うトラベルクリニックで受けることになります。
私たちはヨーロッパはスペインに住んでいます。スペインではB型髄膜炎という病気は、症例数は決して多くはないものの、年間数百例は見られるもので、その死亡率が10~30%と言われていることもあり、2015年10月より任意接種の対象として導入されました。
我が子は第1回目の接種を2016年10月に受けました。その際には2~3日間高熱が出るという副作用がありました。詳細はこちらで説明しています。
在庫切れのワクチンで延期へ
第2回目のワクチンは2ヶ月後の12月に行われる予定でした。
ですが、予約した日に病院に行き待っていると、先生の診察室の前に張り紙が。
Bexseroは在庫切れです
Bexseroって聞いたことあるよ。そうだ、息子の母子手帳の予防接種の欄に貼ってあったシールにそう書いてあった。というか、今日受ける予定の予防接種ってそのまさにBexseroじゃないかしら。
嫌な予感は的中。B型髄膜炎のワクチンBexseroが、スペインで認可されたのは2013年、薬局に並び始めたのが2015年。2016年12月には予防接種を受ける人が殺到していて、在庫がない状態だったのでした。この在庫薄の状態は、2017年5月現在も続いていると思います。
えっと…、1回目既に受けてるんですけど…、2回目どうすればいいの?…。
病院の受付の人は、1回目を既に接種している人のために、優先的にワクチンを提供するので、ウェイティングリストに名前を書いてくださいと言われました。ワクチンが届き次第、電話をくれるそうです。
予定より1ヶ月遅れで2回めの予防接種
病院から電話があったのは、年明けの2017年1月中旬のことでした。冬休み開けで、息子の幼稚園行きたくないよう病がマックスで、じゃあもう幼稚園行かなくていいよーと1週間休んでいる最中のこと。少し風邪気味でもあったのですが、予約待ちでようやく回ってきたワクチンですもの、来てくださいと言われて行かないわけにはいかない、キャンセルしたら次いつになるか分かったものじゃない、と思い、病院に向かったのです。
いざ接種をしたものの…
午前中、病院に行き、いつものように体重や身長を測り、診察をした後、左腕にブスリと注射を刺されました。刺される瞬間、子どもが少し動いた気がしました。腕のいつもより後ろ側に打たれたような気も。
とにかく注射は終わり、家路につきました。普通に昼ごはんを食べました。
少し経って、左腕が痛いと言い始めました。だんだん強烈に痛いと言い始めて、泣きはじめて、ソファに座ったまま動きたがらなくなりました。注射を打った上腕部だけではありません。
私が左手の指を触ると痛いと言って嫌がります。左手全体が痛いようで、ほとんど左手が動かない状態でした。左手だけではありません。左の肩から首にかけてもほとんど動かせないようでした。首を左右に振ることもできません。
身体を動かすと痛いので、立ち上がることもできない状態になりました。座ったら座ったまま、寝たら寝たまま、なるべく身体を動かさない体制を維持します。まさに、寝たきりの状態になったのです。熱もありました。38度を超えています。
たかが予防注射でありえない!と思いました。
左側の上半身が動かなくなる
数時間様子を見ましたが、良くなる気配が見られません。注射を打った病院に電話すると、注射をした腕が痛くなるのは仕方ないから、アセトアミノフェンかイブプロフェンの飲み薬を飲んで様子を見てくださいと言われました。でも、うちの子、飲み薬はほとんど吐き出しちゃうんだよね…。
しかも、注射した腕が痛いとかそういうレベルではないのよね。
注射した後の腕が痛いという感覚、分かります。私も破傷風の予防接種をしたとき数日間痛かったから。でも、そういう局所が痛いっていう感じではなくて、左側上半身全体が動かないって状況なんですけど、これでも問題ないわけ?
その頃は、トイレトレーニングも家の中では99%成功していたのですが、身体が動かせないのだから、もうトイレどころではない。結局、オムツに逆戻り。
家にお医者さんが訪問
契約していた私立の保険会社の健康相談サービスに電話すると、家にお医者さんが来てくれることになりました。やってきたお医者さんは、子どもの様子を見て驚いていました。
もし、自分の子どもがこんな状態になっていたら、とお医者さんは言いました。救急に連れていって神経外科医に見てもらいます。注射器の針が、誤って神経に刺さってしまった可能性を疑うから、と。
ハァ、注射針が神経に刺さる?
確かにいつもより腕の後側の場所に針が刺さった気はしたけど…。
タクシーで子ども専門病院へ
もう私の想像の範囲を超えていました。その頃には、夫も家に帰ってきてたので、夫が動けない子どもを担いでタクシーに乗って、3人でいつも行っている病院とは別の子ども専門病院へ向かいました。もし、お医者が誤って針を神経に刺したとしたら、同じ病院だと、医者をかばって正しい判断をしないかもしれないから。
病院に到着して、事情を説明すると、すぐに私達の順番が回ってきました。緊急と判断されたのでしょう。
ただ、車好きの我が子。大好きなタクシーに乗って興奮したのが良かったのか、病院で待っている頃には、少しだけ、ほんの少しだけですが、左手の指先が動くようになっていました。抱っこされている間、左手に少し体重をかけることもできるようになっていました。100%ダラリンという感じではなかったんですね。行く前に飲んだアセトアミノフェンが少量ながら効いたのかしら。
女医さんの判断
対応してくれた女医さんも、わずかに動く左手を見て、最悪の状態ではないと判断したようでした。女医さんは言いました。
「私にも双子の子どもがいるの。もう小学生だけどね。最近、Bexsero(B型髄膜炎のワクチン)を注射したわ。そしたら、一人の子が3日間くらい注射を打った方の腕が動かなくて、しばらく左手を使わずに遊んでいたのよ」
医者の一意見というよりは自分の子どもの体験談という感じでしたが、なぜか説得力がありました。息子の場合は、左上半身が全く動かないので、女医さんの息子さんより症状は重いけれども、左手が動かなくなった子が他にもいる、さらには、その子は快方に向かったという事実。少し安心しました。
女医さんが言うには、注射針が誤って神経に刺さった可能性はないと思う、とのことでした。注射を刺した腕の場所も通常の範囲内だといいます。
ズバリ、副作用が重く出たのでしょう、と。とにかく、ここ数日様子を見て、2、3日経っても全く症状に改善が見られないのなら、再び来院してくださいとのことでした。
少しずつ、少しずつ、改善
息子が良かったのは、食欲はあったということでした。
家にいるときは、まず全く動くことができません。寝返りを打つように体制を変えることも無理。ですが、お腹が空いた、飲み物が飲みたい、という食欲はあって、そのときには、左側には触らないようにして身体を起こしてあげると、きちんと食べてくれたのでした。もちろん、いつもより量は少なめでしたけど。また、左側上半身を触ったり、動かしたりしなければ、痛みはないようだったので、安静にしていれば大丈夫という状態でした。
翌朝になると、まだ身体を動かすことはできないものの、左手の指先が昨日よりも動くようになってきていて、起き上がった際にに軽く手で身体を支えようとする動作ができるようになりました。小さな変化ですが、少しずつ快方に向かっていると感じました。昼間は、ソファに横たわらせて、テレビを見たりして気を紛らわせていました。右手は動くのですが、オモチャで遊ぶといった動作は左側にも響くらしく、基本モノを掴むことはしたがらなかったです。
3日目になると、首を左右に動かすことができるようになりました。また、上半身を起こした際に、他の人や物に支えられなくても、座った状態を保てるようになりました。また、立たせると、歩いたり動いたりは無理だけど、自力で立った状態を保てるようになりました。
この頃、日本に住む私の両親とスカイプでビデオ通話をしたのですが、普段はあちこち動き回ってウルサイ息子が、微動だにせず、ソファに寝たままの状態を見て、驚いていたのを覚えています。
結局、1週間後には、自分で動いて、オモチャで遊んだりができるようになりましたが、その際も左手は殆ど使わずに、右手だけで遊んでいる感じでした。この状態では幼稚園は無理と判断し、そのまま休ませることに。
結局、両手ともにまともに動き、普通に生活できるようになるまでさらに1週間かかかりました。注射をしてからトータルで2週間、左側の違和感に悩まされたわけです。
B型髄膜炎のワクチン、接種すべき?
以上、3歳の息子が直面したB型髄膜炎のワクチンBexseroの副作用についての体験を書いてみました。
幸運にも、2017年5月現在、左手の違和感などは一切残っていません。あの2週間がとにかくキツかった。それだけです。
このワクチンは日本ではまだ認可されていませんし、これから先、認可される可能性は低いかもしれません。日本では殆ど発生が見られない病気なので。
ですが、私みたいに、スペインや日本以外の国に在住だったりで、B型髄膜炎のワクチンを子どもに打たせるかどうかという選択を迫られる方がいらっしゃったなら、私はワクチンを接種することを勧めるか…。
答えは…
…答えるのは難しいです。
というのも、結局、ワクチンを接種するかどうかは、その家庭の方針次第だと思うし、任意のワクチンで費用がかかってくる場合は、経済的事情も加味されます。またお住いの地域で、病気の発症がどの程度あるのかを知るのも大切でしょう。要は、個別の環境で変わってくるから何とも言えない、というのが実情です。
ですが、私達の息子みたいな副作用があったケースがあるということは、頭の片隅に置いたうえで、決断をしていただければなと思います。
コメント
ブラジルに住んでいる者です。大人が打っても副作用がひどい(打撲のような痛み)です。これを一歳児に2回もうたなければならないと考えると気が引けます。
MJさん、コメントありがとうございます。大人が打った場合も副作用があるんですね。私の周囲を見てみても、全く大丈夫だったお子さんも多かったりして、やはり個人差が大きいようです。何歳で予防接種を行うかは悩みどころですよね。